狂愛彼氏


何かを振り払うかのように頭を振って、適当に二本ジュースのペットボトルを掴むと、レジに向かう。


何気なくバイクを止めてある方を見てみると―――誰もいない。


(は?)


女がいない。
ヘルメットもない。


慌てて辺りを見渡すが、暗いのでよくわからない。
舌打ちをして、ジュースを戻しに行こうとした視界の隅に、見慣れたものが入る。
反射的にそちらをみて、俺は深いためいきをついた。


『………おい』

『………』

『なんで待ってなかったんだよ』


丁度、コンビニのスィーツコーナーに、俺のヘルメットを抱えたまま眺めている女。


(くそ、慌てさせやがって………)


しかし、見つかってよかった。


俺が女の隣に行っても、チラリとも見ない。


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