狂愛彼氏


「なに?」

「どうして、愛麗は、私といるの?」


愛麗は、目を見開いた。


「急に、どうしたの?」

「なんか、気になって」


まるで正反対な私達。
愛麗は、瞬きを繰り返すと、ふわっと優しい笑みを浮かべる。


「あんた、覚えてる?」

「なにを?」

「五年前、あんたが―――」


愛麗の声は、車のクラクションに掻き消されてしまった。
理由が聞けそうだったのに。誰よ邪魔したのは?
クラクションのした方を見ると一台の車が止まっていた。


「愛麗ー」


車の中から顔を出した人は、愛麗の名前を呼ぶ。


「あ、優」


瞬間、愛麗は一変女の顔になって私の手を引いて歩き出す。


(………答え、聞いてない)


せっかく、聴けるチャンスだった。
それをぶち壊してくれたのはあの車、愛麗の彼氏だ。


「遅くなってごめんな?」

「ぜ、全然!」


頬を赤くして、愛麗は首を振る。
その姿は、私の知っている愛麗とは結び付かない。


(え、これ誰)


私は、隣の人物が愛麗に見えなくなった。
凄い、こんなに猫かぶりできるもんなんだね。


「連れが中々来てくれなくてさ、時間かかった」


やれやれと肩を竦める彼氏に、中から別の男の人の反論が聞こえてきた。
つまり、車の中には二人。


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