狂愛彼氏


「あたしこそ、ごめんなさい」

「いいよ、愛麗のお願いは聞いてあげたいし」


優しい笑みを浮かべる彼氏。
私は、愛麗の後ろで、心の中で問いかける。


「(お願い……愛麗が、なんて言ったのか手に取るように分かる。突っ込みどころ満載だわ)」



やれやれ、と軽くため息をつくと、不意に感じた視線に顔をあげた。


いつの間に、後部座席の窓が開けられたのか、そこから射ぬくように私を見つめるその人。


(何だろう、かなり見られてる……)


私の顔に何かついてる?
それとも、愛麗と一緒に来たのが私みたいなのでがっかり?………後者かな、きっと。


とても整った顔立ちをしている。
黒髪に白なのか金なのか、数本入っていて、目つきも愛麗の彼氏と比べると鋭くて、雰囲気も何となく近寄りがたい感じがする。


「君が、愛麗のお友達?」


愛麗の彼氏に聞かれ、ハッとして頷く。


「遥、て言うの」

愛麗が紹介してくれる。


「遥ちゃんね。よろしく。とりあえず、俺たちの自己紹介は車の中でいいかな?」


道の端に止めているとはいえ、邪魔にならないというわけではないもんね。
愛麗の彼氏は、助手席のドアを開ける。
必然とそこは愛麗の席となる。
つまり、私は、後部座席。


(嫌だなー……)

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