熱に堕ちて
出会ったのは幼稚園の時。
親の仕事の都合で引っ越し、お隣さんが蒼鳳だった。
その頃の蒼鳳の第一位印象は悪ガキ。
けど子供のくせにたまに見せる凄く優しいところが好きだった。
こんな子ほかにいないと幼いながらに感じていたのかもしれない。
両親が病気で他界した時も一番支えてくれたのは祖父母よりも友達よりも誰よりも蒼鳳だった。
高校に入って泳斗と出会って蒼鳳と少し距離が出来た。もうこの頃から私はおかしかったのかもしれない。
だって泳斗を追いかけてこの大学に入ったのだから。
蒼鳳に大学から一人暮らしすると報告した時、初めて蒼鳳の気持ちに薄々気が付いた。
「…なら…心配だから俺も一人暮らしするわ、仁海のアパートの空いてる部屋で」
しばらくしてこんなこと言って本当に隣で一人暮らししだしたもんなぁ…心配性すぎだよほんと。
ただでさえ私が行く大学に着いてきてさ、受けたい学科があるとか言ってたけど私と同じ大学に行きたかったっていうのが大半でしょ。
…ほんと
馬鹿みたいに真っ直ぐ
愛してる なんて
一生言われることなんてないと思ってた。
私は…
「…蒼鳳…ごめん…」
まだ蒼鳳の気持ちについていけない。
それに…
馬鹿みたいに真っ直ぐな貴女にこんなお腹の女を背負わせるわけにいかない
「わかってる、俺の気持ちに応えられないのは。」
「けど、この先仁海を俺以上に支えたいと思う男は現れない。」
仁海は返す言葉が無かった。
「言っとくけど俺はお前の人生を一緒に背負いたいんだとか思ってねーし。」
「背負わないといけないほどそんな重いもんじゃねーだろ?言ってしまえばおろしたら何も無かったことになる。」
「…蒼鳳」
「どれだけ好きかってのもいいけど、どれだけ大切かでも一緒にいられると思うんだ。お前は俺のこと好きではなくても一番大切なひとって思ってくれていたら一緒にいて欲しい。そう思ってくれてたらそれが一番うれしーかな!」
「…まぁ…それで、いつか俺のこと好きになってくれたらなって。」
「だから……仁海と一緒に生きていきたい。……だめか?」
今までどんな気持ちでそばにいてくれたんだろう。
「その言葉に甘えてしまったらまた自分が怖いよ…」
「それじゃなんのために俺はずっとお前のこと追っかけてきたんだよ。」
「俺だってお前の泳斗に対する気持ちはわかるよ。
…俺も、仁海に対してガチで執着心がやべーから」
「…」
「アイツなんかこの手で殺してやりたいって…」
「…蒼鳳」
「お前のそばで守るとか言ってても結局仁海がずっと隣にいてくれないと俺が生きていけない」
久しぶりに、涙がこぼれた。
隣にいてくれないと生きていけない。
そう思える人がいるって幸せで。
私もそんな人になれたんだね。
私も蒼鳳がずっと隣にいてくれたおかげで今こうしていられるから。
けどお願い。
例え貴方が嫌じゃなくても。
いいよって言っても。
また私を堕とさないで。