王族の婚姻をなんだと思っていますか!
いや。そうじゃなくて、この場はどうすればいいの。

あまりにも突然すぎて、私は右手を殿下に取られたまま動けないし、父上はなにも言わないし、殿下はキラキラを飛ばすようなイケメン笑顔向けてくるし。

もしかして、侍女たちがこぞって豪華すぎるドレスを着せようとしていたのは、これが理由なのかもしれない。

それって、私だけが知らなかったってことだよね?


……暴れてもいいなかなぁ。


とりあえず、今はなんと返答していいのか全然わかんないから、殿下に微笑みを返す。

頬がピクッとひきつったのは、この際だから無視しよう。


「姫……?」

「ありがとうございます、ウォル殿下。私のことはどうぞ、ノーラとお呼びくださいませ」

正式な名乗り無しに、愛称で呼んでもいいよって返答する。

求婚者に対してのそれは“返事は保留だからね”のサイン。

ウォル殿下はゆっくりと立ち上がり、手を離すとそのまま私の頬に触れた。

「予想通りの返答で、少し残念です」

それなら、他の方法考えなよっ!

心の中の文句は、たぶん笑いだしそうな父上にしか気づかれなかったと思いたい。









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