王族の婚姻をなんだと思っていますか!
だいたい、屋敷の中でも外でもバタバタしていた私が、ちょっと風邪引いたからってみんな心配しすぎだから!

確かに珍しかったのかもしれないけど、毎日毎日、部屋を一歩出ようものなら、そそくさと部屋に戻されるしさ!

ああああ、動きまわりたーい!

そして、編み上がったマフラーの端を処理し終わって、溜め息をついた。

今回は濃い藍色のマフラー。今でなん本目のマフラーだろう。

ダークブラウンのマフラーは父上にあげた、黒と白のマフラーは兄上に、目が覚めるようなピンクは侍女のリナに、後は……と、考えて、数えるのをやめた。


ウォル殿下から求婚されてから数週間。風邪が治ってからそれだけ経つのに、部屋から出るのは禁じられている。

そうすると、暇で暇で仕方がない。

私みたいに木刀片手にしていた娘でも、10代の前半は毎日の予定がたくさんあったはず。

普通の貴族の娘なら、習い事にお茶会に、いろいろと誘われたりで、冬だろうがなんだろうが忙しかった。

でも私の場合、貴族の娘らしい教育は、すでに習い終えているし、友達の多くは嫁ぎ先に慣れるので大変そう。

わかっているんだ。普通の19歳は、嫁いだ先で女主人の教育に移っているんだって。

そして、私は確実に行き遅れてしまってるって。
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