王族の婚姻をなんだと思っていますか!
そして、いろいろ諦めた母上が、騎士をやっている兄上に何かがあったときの為に……と、侯爵家の家のあれこれを教え始めてくれていたはずなのに。

ここにきて、それをやめたのは、ウォル殿下に求婚されたからだよね。


殿下っていくつだったかな。あれだよね、国王陛下とはかなりの年の差があったはず。

ウォルフレード・ノート・フォン・セレスティア、27歳。

現国王の年の離れた弟で、近衛兵団団長。

刃物みたいな冷たい鋭さを感じる美形で、女官の間では“氷の如き孤高の王子”とか呼ばれているらしい。

私が知っている知識と言えば、貴族名鑑の予備知識と、たまに城におつかいに行った時に聞いた女官の噂話くらいだ。

確かに男らしい、鋭さもある男前。だけど氷の如き孤高の王子って、なんだかしっくりこないよね。

生きるか死ぬかの、あの吹雪の夜は、かなり近寄りがたい冷たい印象だったけど、次にあったときには、キラキライケメン王子様オーラ発していたもん。

……だけど、なんでいきなり私に求婚なんだろう。

そもそも、27歳にもなる王族の男子が、未婚で婚約者もいないっていうのが驚きだけどさ。

社交会にいかないから、噂話すら知らない。

唯一、城の内部情報を持っていそうな男子ふたりも、そういう類いの噂には縁遠そうだしなぁ。
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