王族の婚姻をなんだと思っていますか!
考えていたら、ドアをノックする音に気がついた。

返事をすると、母上が顔を出す。

「ノーラ、いいかしら。あの人またお昼を忘れていったみたいなの」

父上の忘れ物はしょっちゅう。普通なら家の者が届けに行くけれど、それだと城の門までしか行けない。

以前、昼食のバスケットを家人に持たせて届けた時に『見知らぬ人間から受け取った食い物など、食えるか』と、父上がわがままを言い出し、それ以来、食べ物だけは私か母上が届けに行くようになった。

さすがに城の内部までは行けないけれど、騎士団の詰め所は城の門を通るとはいえ、外側に位置しているから、辛うじて貴族の身分であれば通れたりするんだ。

いつもなら『またか』って思うところだけど、今日はラッキー!

ナイスです父上!

「行きます行きます! 父上に渡せばいいんですね!」

喜色を浮かべた私に、母上は目を細める。

「……いいこと、ノーラ。城に行っても、寄り道せずに帰ってくるんですよ」

……あの。母上。私はこれでも19歳になりますので。

そう思ったけど、厳しい視線の母上には、何も言わない方がいいと判断した。









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