王族の婚姻をなんだと思っていますか!
……これはいろいろまずいんじゃないかな。

相手は三人、こちらはひとり。彼らは馬に乗り、私は徒歩だ。

「私たちが届けて差し上げましょうか?」

「いいえ。けっこうです」

ニヤニヤしてるこいつらに頼んで、父上がご飯食べるとは思えないし。

「では、送って差し上げましょう」

言うなり、馬上から腕を掴まれギョッとした。

「さぁ、馬に乗ってくださいよ」

腕を高く持ち上げられてる状況で、どうやって馬に乗れと言うつもりだ!

キッと腕を掴む男を睨むと、パッと手を離される。

勢い余って、危うくバランスを崩しそうになったけど、なんとか踏みとどまった。

舌打ちが聞こえたから、転ばせようとしたんだろう。

どうしようか。

さすがに侯爵家の娘相手に大ケガ狙いじゃないと思うけど、人対馬だと馬の圧勝だろうし。

悩んでいたら、また違う方向から低い声が聞こえた。

「そこでなにをしている」

パッと振り返った瞬間に見えたのは、馬に乗った黒い制服姿が数名。

どうしてこんなところに近衛兵がいるの?と、思ったけど、彼らの冷たい視線は、伯爵家の次男坊たちに向けられていた。


「え。いや、私たちは……」

挙動不審になった伯爵家の次男坊に、ひとりの近衛兵が溜め息をつく。

「女性ひとりを囲むように、男が三人ですか。穏やかとは言いがたいですね?」

全然、穏やかではなかったですよ?

思わず心の中でツッコミを入れてしまう。
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