王族の婚姻をなんだと思っていますか!
***


「侯爵家の料理人は、料理が上手ですね」

そう言って、サンドイッチを頬張るウォル殿下を眺めながら『あれ?』と、首を傾げる。

場所は騎士団の演習場から離れた、応接室。

騎士団の詰め所に、こんな場所もあるんだと感心したのは少しの間。

父上と私と、何故かウォル殿下が、仲良くバスケットの昼食をわけあうことになっている。

そりゃ、サンドイッチは大量にあるから問題ないけど、どういう経緯で、こういうことになっているんだろ?

とりあえずお茶を淹れて、ウォル殿下の前に置くと、彼は嬉しそうにしてくれた。

それから私の様子に、微かに目を細める。

「不思議そうですね?」

「まぁ。そうです」

不思議以外のなにものでもないではないか。相手は王族だよ、王族。

「騎士団長と、賭けをしていまして。昼食をご馳走になっているのは、たぶんオマケでしょう。ね?」

最後に、ムスッとサンドイッチにかじりついている父上を眺めるウォル殿下に、私も父上を黙って見つめる。

父上は口の中のサンドイッチを飲み込んでから、めちゃめちゃ嫌そうな顔をした。

「いちいち殿下に、我が家にお出で願うのも憚られましょう」

言葉遣いは丁寧だけど、ずいぶん刺々しいんじゃない?

そう思ったけど、ウォル殿下は気にしていないようだ。
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