王族の婚姻をなんだと思っていますか!
ニッコリと微笑みながら懐に手を入れると、白い封筒を取り出して、何故か私に差し出してくる。

「これは?」

「招待状ですよ。来週、姪の誕生日なんです」

……それって王女の誕生日ってことだよね?

確か、うちにも招待状が届いていた気がするんだ。王宮内でお祝いの晩餐会をするからって。

侯爵家として、すでに招待状は受け取っているはずで、母上はとても張り切っていた記憶もあるけども。

「あなたに招待状です。ノーラ・フォレシティオ令嬢。私から、あなたに直接」

じっと見つめられる視線は真剣で、微かに頬が熱くなっていくのがわかる。

王女の誕生日を祝う招待状を“家”に送られるのは、この国の貴族であれば当然で当たり前のことだ。

たぶん、国中の貴族が招待を受けているだろうし、中には他国の要人も混ざっているかもしれない。

だけど、王族自ら“個人”に送るのは、少し普通じゃない。

王女の誕生日を祝う祝賀会であれば、国の行事ではあるけど、ウォル殿下にしてみれば親族のパーティーだよね。

内輪のパーティーへ個人的に誰かを呼ぶんなら、相手は親族か、もしくは恋人か……。

どうやら私は、ウォル殿下から個人的に招待を受けているらしい。

確かに、求婚紛いのことはされたけど。

だけどなぁ……。
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