王族の婚姻をなんだと思っていますか!
「私、しばらく社交からは遠退いておりまして、お花を贈ろうかと思っていますの」

微笑みを浮かべながら、遠回しに断りを入れると、同じような笑みが返ってきた。

「そのようですね。ですが、私にエスコートを任せていただければ幸いです。国王陛下にも許しをいただいてますので」

「はあ⁉」

思わず声をあげてしまってから、慌てて口もとを両手で押さえる。

国王陛下にも? 国王陛下だと?

国王ってあれか、間違いなく我が国の国王陛下か?

差し出される白い封筒を見下ろしてながら、あんぐりと口を開ける。

国王陛下にも“許可をいただいた招待状”って……どうしよう。

これって、一介の侯爵令嬢が断っていい案件じゃないよね?

そう思って、チラッと父上を見ると、スッと視線を逸らされた。

「負けたからには、ワシはなにも言えんのだ。すまない」

なんの話をしているの?

「陛下にも言われておる。親がクチバシを挟むなと。陛下も陛下だ。からかっていらっしゃる」

ブツブツ言っている父上の前に、とりあえず落ち着こうと思いながらお茶を出す。

それからまたウォル殿下を振り向くと、めちゃめちゃご機嫌よさそう。

なんでだ?

「私が団長に勝ったら、姫に言い寄るのを邪魔しないように、陛下に釘を刺されたんですよ。弟思いの兄で、私はありがたいです」

「え。賭けって……そういう賭けですか? 何をやってんですか、父上!」

鋭く睨み付けると、父上は拗ねたような表情でお茶を飲む。
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