王族の婚姻をなんだと思っていますか!
サラサラとなんでもないことのように言われて『あ。そうか』と、今さら納得する。

情報があるかないかで、作戦の組み立てかたは違うかも。

確かに大切だ。ちょっとしたことで勝敗を左右してしまう可能性だってある。

そして、これが“戦場”なら、フェリシティオ侯爵家の娘である以上、私は立ち向かわなければ。

手を差し伸べてくる殿下を見上げ、その手を力強く握りしめる。

「一緒に立ち向かいましょう!」

「いえ。のんきに楽しむつもりでいますけれど」

あっさり裏切られて、思わず力が抜けそうになった。

……わ、わけわからん人だよね、この人も。

「私は凡庸な王弟ですからね。下手に動くと政治的にややこしくなるんですよ。王太子がもう少し大人になれば、もっと動きやすくなるのですが」

笑顔のままで、微妙に寒いことを言っている。

その上、そう言いながら掴んだ手を引かれて腕にかけられた。

これじゃ、まるで仲良く腕を組んでるみたいじゃないか。

「ウォル殿下……なにをなさりたいんですか」

「せっかくですから、少しはメリットがないと。パートナーに腕も組んでもらえない、情けない男にはなりたくありませんし?」

……ウォル殿下って、意外と腹黒いんかもしれない。

呆れているうちに歩きだされ、溜め息をつきながらも腹をくくる。

私だって、ここまできて尻尾を巻いて逃げるのはプライドが許さない。

やってやるもんね!
< 37 / 85 >

この作品をシェア

pagetop