王族の婚姻をなんだと思っていますか!
「その意気ですよ。弱々しく不安そうなあなたもそそられますが、何かに真剣に取り組む、あなたの真っ直ぐな瞳が……」

「へ……?」

ちょうどホールの扉を開けられて、言いかけたウォル殿下の声が、会場のざわめきに紛れて聞こえなかった。

優しい微笑みを降り注ぐ殿下と、何故かこちらを見て恐慌状態に陥っている会場と、どちらを取るべきか。

と言うか、どうして会場のみなさんは、ウォル殿下を見て固まっているんだろう。

中には青ざめている人もいるよ?

「気にしなくていいです、悪目立ちしているのは私ですから。行きましょうか」

そう言われてキョトンとすると、ざわめく会場の中を殿下の手に引かれながら歩いた。

内宮は白亜の城と呼ばれているけれど、きらびやかなシャンデリアと、至るところに灯された蝋燭の下、どこか温かいぬくもりを感じさせる。

穏やかに流れる楽士たちの音楽。

それから、華やかに着飾る紳士淑女のみな様たち。

過去に招待されたどの舞踏会よりも豪華で、場の空気にのまれてしまいそう。

思えば、城の舞踏会に参加したのはこれが初めてじゃないのかな。

まず、国王陛下と王妃殿下に挨拶をして、王女殿下に回復と誕生のお祝いを述べると、立ち並ぶお歴々の方々の談笑に加えていただいた。

……よくよく考えてみなくても、こんな高官たちに囲まれることなんて初めてで、頭がパニックになりそうなんですが!
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