王族の婚姻をなんだと思っていますか!
そもそも、うちの国はさほど大きくはない。

それなのに、古くから続く国として知られていた。

山岳地帯では金や宝石が産出され、平地では春から秋にかけて豊かな実りを望める。

だから、他国に依存することは少なく、独立国として歴史を刻める。

その豊かさを手に入れようとする国も少なくはない。

でも、戦になりにくいのは、うちの国は守りやすいから。

それだけじゃなく、戦の炎が中央の王都にやって来る前に終息するのも、各地にある砦の騎士団領域で、統率の取れた騎士たちがこの国を守っているからだ。

考えていたら、ウォル殿下は目を細めて息をつくと、グラスをそっと置いた。

「理解が早くて助かります。ですので、なにかあると悲鳴をあげて気絶するような姫を、私は欲してません」

「いえ、でも、そこらの令嬢よりは度胸があるかもしれませんが、私も普通の娘にかわりないですわ」

「ですから、普通の貴族令嬢は従僕もつけずに、単独で吹雪の夜に飛び出したりなさいませんよ」

それ言われたら痛い。普通じゃないって理解できちゃうから痛い。

でも、乱暴者と言われてても、私だって本当にそこらの令嬢と大差ないんだけど。

しょんぼりしていたら、ウォル殿下がいきなり立ち上がり、壁際へ歩いていった。

そして、なにを思ったのか唐突にテラスへ続く大きな窓を開ける。
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