王族の婚姻をなんだと思っていますか!
ウォル殿下をまじまじと見上げるそばで、父上はしみじみと頷く。

「殿下は、昔から無駄に行動力がありましたからな」

もしかして、父上はそれを見越して毎日のように忘れ物をしているの?

王弟殿下が毎日のようにうちの屋敷に来たら、かなり問題あるけどさ。

でもこれって、単に娘を人質みたいに差し出してるって言わないかな……。

「ノーラも嫌がっているわけではないだろう。最近はずいぶんとおしゃれしとるではないか」

父上の言葉に、まわりの視線が藍色のドレスに集まってきて顔を赤らめる。

「ち、違う。これは母上や侍女たちが……」

メインプロデュースは侍女だ。せっせと新しいドレスを持ってきてくれる。母上は少し口を挟むくらい。

毎回毎回、青色メインのドレスを身に付けている私も私なんだけど、ほら、私だって乙女だもん、新調されたドレスやリボンには目がないっていうか、嬉しいじゃない?

そんな言い訳を心の中で呟き、小さくなった私の頭をウォル殿下が優しく撫でてくる。

「今度、私からもなにか贈りましょう。思っていたより、あなたは青が似合う」

「あ、ありがとうございます」

「では、行きましょうか。今日は姪が遊びに来たいと申しておりましたので、少し騒がしいかもしれませんが」

しっかり私の手を取ってくる彼に、無駄だろうなぁと思いつつも反論してみる。
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