王族の婚姻をなんだと思っていますか!
「私は正式に、あなたの父君の前でプロポーズいたしましたからね? それを保留にしているのはノーラでしょう」

ええええー? 今そんなことを言っちゃうんですか⁉

「この機会なので言わせていただきますが、出会ってろくに話したこともない方からいきなり求婚されて、頷く娘がおりますか⁉」

「いないかもしれませんね。ですが、貴族の婚姻など似たようなものでしょう。それに、ここ数日で私のことは理解したでしょう?」

謎は深まるばかりな気がするんですけど。

「ウォル殿下が、変わり者だということはわかりましたわ」

「ノーラも人のことは言えませんからね?」

「私が普通とは申しませんが、ちゃんと言わないと、自分の都合にいいように殿下は動くじゃないですか!」

「当たり前ですよ。ノーラのペースに合わせていたら、時間がかかりそうですし」

言いたい放題だな!

眉を吊り上げた瞬間、国王陛下が大きな声で笑いだした。

「仲がいいのは理解した。久しぶりにウォルの楽しそうな表情を見れて私も嬉しい。ただ、そろそろ昼食を運ばせてもいいかね?」

……ヤバい。すっかり存在を忘れていた。

国王陛下の存在を忘れるなんて、私はなんて失態をしてしまったんだ。

「父上にしばかれる……」

「大丈夫ですよ。兄上はあなたの父君の性格は存じているでしょうから、わざわざ言いませんし、バレません」

事も無げに言うウォル殿下に、ちらりと視線を向けてから、肩を落とした。

そういう問題でもないんだけどね。
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