王族の婚姻をなんだと思っていますか!
とにかく、王族に囲まれてのランチは、堅苦しい形式張ったものではなくて、絨毯の上に履き物を脱いで座り、軽いサンドイッチやキッシュなどのペイストリーなど、手にとって食べるようなものが用意されていた。

「南方の国では草原に敷物を敷いて、風を感じながら召し上がるんですって。春にはもう花も咲いていて、花を見ながら食べるときもあるそうよ」

たぶん、この昼食の発案者は王女なのだろう。

果実がふんだんに使われたデニッシュを食べながら、楽しそうに教えてくれる。

「ノーラ……肩の力を抜いても問題ありませんよ。我が国はどちらかというと古いしきたりが多いですが、身内の間ではこんなものです」

ウォル殿下はそう言って、サンドイッチを食べていた。

……私は身内じゃないって、気づいていながらその言動ですか。

本当、いい性格してるんだね、ウォル殿下は。

溜め息をついて、しきりに話しかけてくる王女の相手をしばらくしていたら、国王陛下夫妻が『まだ執務があるから』と、微笑みながら部屋を出ていった。

その少し後に、今度は王太子と王女が『勉強の時間だから』と、同じようにいなくなってしまう。

残されたのは私とウォル殿下。

いつの間にか、給仕をしていた侍従たちの姿も見えなくなっていた。

ふたりきりは、ちょっと緊張してしまうかも。
< 59 / 85 >

この作品をシェア

pagetop