王族の婚姻をなんだと思っていますか!
さてと、本当にどうしようかな。

そう思って腕を組んだところで、話し声が聞こえてきた。

「連れ帰ってきてどうするんだよ!」

「あのままにしておけないだろうが。城の中で、あの女が死んでるのが見つかったら大騒ぎだ」

「とにかく生きてただろ! どっちにしろ侯爵家の娘が城から消えたんだ、大騒ぎになってる」

うん。まだ私が気絶してるとでも思っているのか、普通に話をしているね。

……っていうか、言い争ってる。

「とりあえず逃げようぜ。どのみちこの寒さだ。あのまま放置しておけば、暖炉の火もないんだし凍死する。死人に口なしだろう」

違う声が聞こえてきて、めちゃくちゃ恐ろしいことを言い出した。

私は誘拐されたらしい。しかも営利目的でもなく、なにかトラブルがあって、仕方なく誘拐されたみたい。

ここはどこかわからないけど、確かにこの部屋に暖炉らしきものはない。

外気が入り込んでくる気配もないけど、寒さを感じる程度には空気が冷たい。

彼らのいる部屋に暖炉があって、それでこの部屋が少しでも暖めれているのなら……。

彼らがいなくなり、暖炉の火も消えてなくなれば、待つのは間違いなく凍死だ。

そんなのは待ちたくもないし、待っていられるはずもないじゃない?

だけど、なにができるんだろう。

頭にケガを負っている以上、あまり激しい動きはさけた方がいいよね。

また気を失ってしまったら、なにもできなくなってしまうし……。
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