王族の婚姻をなんだと思っていますか!
だけど、母上に耳を引っ張られてギャーギャー騒いでいる父上。

これが王都でも精鋭と言われている騎士団の団長だなんて、今の姿から想像できる人はいないだろうな。

騎士団の練習場に顔を出したことがあるけど、大剣ブンブン振り回して、騎士様がぶっ飛ぶ姿を何回見ただろう。

私は知っている。見習い騎士の若い子からは“鬼”だの“猪”だのと呼ばれてるのが父だ。

そして無言の上に、悟りの境地みたいに穏やかに耳を引っ張られている兄フェルトも、父上指揮の元、第二連隊の副官をしている。

屋敷にいる時は馬鹿丸出しでヘラヘラしているくせに、騎士団では無口、無表情だから“寡黙な騎士様”なんて、女官たちには言われているみたい。

兄上と話をしたら、口下手なだけの人のいい、単なるお馬鹿さんってバレるんだけどね。

うちの家族って、外面だけは由緒正しい候爵家。

……まぁ、事実、初代王の時代から臣下として仕えていた古い家ではあるんだけど、乱世の時代に国王を守りきったという功績があって授爵され、今は候爵位についているって脳筋家族だしなぁ。

ふたりを追い出した母上を見ながら、深い溜め息をついた。

緩くカールした真っ赤な髪。そして大きな緑色の瞳。白くキメ細やかな肌……日焼けはしにくいけど、赤くなる肌は母譲りだ。

これで“絶世の美姫”とまで言わしめた、妖艶な美しさまで似ればよかったんだけど、私は至って普通である。
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