王族の婚姻をなんだと思っていますか!
「お前さ~。今回って、マリエッタに頼まれて、あの暴力女を王弟殿下に近づくなって脅すだけじゃなかったのかよ」

ミレーユ公爵令嬢のマリエッタ?

もう、違う意味で目眩がしてきそうなんだけども……っ!

「金もらう手はずだったんじゃ……」

隣の部屋の会話が唐突に途切れた。

どうしたんだろうと思った次の瞬間に、聞こえてきたのは阿鼻叫喚の叫び声。

それからめちゃくちゃ暴れるような、物凄い音。

いったいなにが起きているのか、パニックが起こっている。

「こ、こないでくれ! バケモノ!」

バ、バケモノ?

ギョッとしてドアの前から離れ、部屋の片隅にうずくまる。

とにかく、静かにしていよう。隣の部屋では、どうやらバケモノがいるらしい。

こっちだってパニックだけど、どうかそのバケモノが、私に気がつきませんように!

祈る気持ちで息を潜めていたら、しばらくすると、隣の部屋の物音がなくなった。

心臓がバクバクする。まるで耳の近くにあるんじゃないかってくらい、ドキドキと脈打つのがわかる。

静まり返った空間のなか、ドアからいきなりドカッとなにかがぶつかる音。

「ひ……っ!」

両手で口を押さえ、悲鳴を噛み殺し、ドカドカと音がするドアを凝視する。


そして次の瞬間、ドアが破られた。
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