Moonlit Nightmare
「すごい……」
思わず、呟く。
ずっと外に出ることが出来なかった私が、煌めく街を、見下ろしている。
「リンネが外に出られない理由は、日光と、長時間起き上がれない身体が原因なんですよね?
…じゃあ夜に、短時間でこの街全部、知ってしまえばいい。」
そうでしょう?と笑みを浮かべるヨハンの顔がやけに近くて、さっと目を逸らす。
逸らした先にあった光の粒に、目が眩んだ。
「あなた、やっぱり人じゃなかったわね」
「僕は君専属の魔法使いみたいなものですからね」
あっけらかんと言い放つ彼に『魔法使いなんているものか』と言ってやりたいところだけど、現状を確認して、言葉を飲み込んだ。
「…おかしな人……」
「それはリンネだって、同じじゃないですか」
頭上から聞こえてきた声に顔を上げると、先程とは違って真剣な顔をした彼と目が合う。
「リンネ…。
君はどうして病気を治して欲しいと願わなかったんですか?」
澄んだ青の目が夜の翳りを燈して、
「僕だったら、治せたかもしれないのに。」
暗い青に吸い込まれて、逸らせなくなる。