Moonlit Nightmare
口元を隠していたけれど、どこか嬉しそうな私に気がついて暁が怪訝そうな顔をした後…
クスリと口角を上げる。
「お嬢様、そんなに楽しみですか?
…ピアノレッスン」
「へ?」
暁の黒髪の間から覗く切れ長の目が、私の逃げ場を失くして、
そのままニコニコと笑みを貼り付けた彼は、私の髪をするりと指に絡ませる。
「お嬢様がそんなにピアノを弾きたいとおっしゃるなら、…練習時間を、2倍に致しましょうか?」
「はっ…!?」
ピアノレッスン…!?そんな話、聞いていないわよ。
それに私、ピアノは苦手だし。それなら英会話レッスンの方が幾分かマシよ。
そんなの、暁だって知っているでしょうに。
「意地悪な人ね」
一応睨んでは見るけれど、暁はそれを軽くあしらう。
「なら、しっかりとお聞きくださいませ」
「………はいはい。以後気をつけるわ」
…暁は、何気に主人を困らせるのが好きらしい。