Moonlit Nightmare
♦︎☆♦︎
「っ疲れた……」
バフンッとベッドに倒れこむ。
カーテン越しに見える景色は、仄暗くて。
……今日は割と、起きられたわね。
長く息を吐き出して、ゆっくり目を開いて、
窓に目をやって、すぐに伏せる。
…なによ。
「会いにくるって、言ったくせに」
ぽつりと呟くと、
「あれ?呼びましたー?」
「っ、!?」
誰もいないと思っていたのに。
唐突に聞こえた声に窓を開けると、
「な、何してるの…!さっさと降りて!!」
「わぁ、こんなに必死なリンネは初めて見ました」
「馬鹿なこと言ってないでさっさと降りなさい!」
3階の窓の縁に足をかけて逆さにぶら下がったヨハンが、ヘラヘラと笑いながらこちらを見ていた。
慌てて手を伸ばすと、ヨハンはそれを取らずに、自分でバランスをとって手すりの上に着地する。
……とことん、気にくわない。
「よっ、と…。
昨日ぶりですね、リンネ。僕に会えなくて寂しかったですか?」
ニコニコと、彼は顔色ひとつ変えない。
今 私の考えていることを、読んだくせに。
「別に…、普通よ。
昨日が初対面だったのに、よくもまあそこまで自信過剰になれるものね」
舌打ちしそうになるのを堪えて言うと、彼は笑顔を崩さずに、手すりから降り立った。
…彼にとっての『無表情』はもしかして笑顔なんじゃあないかしら。
そんなことを思いながら、一歩、後ずさる。