Moonlit Nightmare
目を逸らす私の顔を、ヨハンがじとーっと覗き込む。
いくら性格を知っていたとしても、その無駄に端正な顔を近づけられては、心臓に悪い。
ヨハンははぁ、とため息を吐いて、諦めたように私から離れた。
「さて、リンネ。今日も、行きますか?」
「ええ、よろしく頼むわ。…と、少し待ってくれるかしら」
差し出される手を掴む直前、ふと思い出して、机の引き出しに丁寧に花かんむりを入れる。
「つけて行けばいいのに」
「馬鹿。あなたの運転はいつも荒いでしょう。どこかで落としたりしたらどうするのよ。
これは……大切な、宝物なんだから」
今度こそ手を掴むと、ヨハンはキョトンとした後、曖昧に笑った。
「………そう、ですね…」
「ヨハン?」
「…いえ、なんでもありません。
じゃ、行きますよ〜」
「ってちょっと待ってそんないきなり…っーー!!」
ぐい、と手を引かれて飛び出した先は、満点の星空。
私の声にならない悲鳴は、夜の闇に掻き消された。