Moonlit Nightmare
「でもこんなに急に来ると、なんだかとても嫌な予感がしますね…」
「…………」
嫌な、予感って…?
どうしてそんなに、複雑そうな表情をしているの?
喉まで出かかった言葉を制止するように、絶妙なタイミングでインターフォンが鳴る。
しばらくして、玄関の開く音と、暁の声が微かに聞こえた。
…対応は、大丈夫そうね。ただ、他の使用人がお客様に出す茶葉を間違えないといいんだけど。
うちは、やけにドジを踏む使用人が多いのよね…とため息を吐くと、ヨハンがベッドの脇に腰かけた。
「!?っ、な、何…」
「外に行けなくなったので、側について読み聞かせでもしようかと」
「あなた、一体私をいくつだと思っているの?」
「あ、添い寝の方がいいです?」
「だから話を聞きなさいよ、ぶん殴るわよ」
「やだー、リンネったら怖いですー」
いや、そんなぶりっ子の仕草をされても、少しも可愛くないわ。
むしろその綺麗な顔でくねくねされると、どうにも顔が浮いてしまっている気がする。
呆れたように笑みを浮かべてみせると、ヨハンはニコっと笑って私の両肩を押した。
「!」
ぐらりとバランスを崩した体を、柔らかいベッドが受け止める。