Moonlit Nightmare
暁を起こさないように気をつけて、扉を引く。
冷え切った素足に、カーペットの感触がダイレクトに伝わって、少しぞわりとした。
目指すのは、隣の部屋。
でも、扉までの距離を走ったからなのか、体が思うように言うことを聞かない。
壁伝いに、ずるずると体を引きずる。
どうして、こんな時に限って。
徐々に大きくなる声に眩暈がするけれど、ヨハンのことが気がかりで、グッと堪えて耳を澄ます。
「……だから、わざわざリンネの家にまで乗り込んで、なんのつもり?リヴァルト。」
リヴァルト……?
また、聞き慣れない名前。
ヨハンと同じ国の人なのかしら。
最近は外国人の観光客も多いと聞くけれど、この付近にそんなに有名な観光場所なんてあった…??
それに、ヨハンのこの口ぶり…。
まるで、私の家を目的に来たみたいな…
扉の向こうで、はぁ…とため息が聞こえる。
「……今回の仕事ぶりはなんだ??お前にしては随分と躊躇うじゃないか。
あまり干渉しすぎて期限が過ぎるようなら、俺があの子をもらうが?」
「ふざけるな…!!あの子は絶対に渡さない!!」
バンッと響いた音に、ビクリと肩が跳ねる。
こんなに怒ってるヨハン、初めて見る…。
ゴクリと、喉がなる。
彼らの言う『あの子』って………。
『これは、仕事着なので』
いつも仕事着のまま私の元へ来るヨハン。
『願いを、叶えてあげる』
私の身体が悪くなってから唐突に現れて、願いを叶えてくれて……
「……………………」