Moonlit Nightmare
Third nightmare

奪ってよ






…その日は、眠れなかった。

頭痛や眩暈、吐き気のせいっていうのも確かにあるけれど…。


『リンネは、僕の獲物だ』

「……………」


彼の言葉を反芻しては、体が重くなる。

ヨハン、やはりあなた……。


「ゴホッ…ゴホゴホッ」


激しく咳き込んだ弾みに、ボロリと涙が零れる。
焼けつくように喉が痛い。


「お嬢様?暁です。医者をお連れしましたので……
「いらないわ。丁重にお帰ししなさい」

「ですが……」

「暁、私に二度同じことを言わせるつもりなのかしら」

「……………申し訳ございません」


暁は知らない。

私はもう、明日には………


引き出しを開けて、花かんむりに指先を這わせる。

…この家から私がいなくなれば、当主は誰になるのかしら。
父様も母様もいないし、暁達だって、今後どうすればいいのかしら。


「……………やめた」


再びゴロリとベッドに仰向けになる。


ふわりと目を閉じて、横たわる。

…もうすぐ、15時の鐘がなる。


夜にはヨハンが来るから、それまでに体力だけでもどうにかしなくちゃ。


そう思って、目を閉じる。


最後くらいは、笑顔でいたいから。




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