Moonlit Nightmare
だけど、そんな行動すらもヨハンにはお見通しで。
ふわりと手すりから降り立った彼は、私の頬に手を滑らせた。
「……リンネ…泣いてるんですか?」
「……っ、うっさい…っ!」
手を払って腕で顔を隠す。
…だって、だって、仕方ない。
最後だとはわかっていたけれど、心のどこかでは思っていたから。
私とヨハンは、変わらずにずっと隣に居られると。
これからも同じ夜が続いていくのだと。
信じて疑わなかったから。
だから…
これが最期だなんて、思いたくないのよ。
「…いつから、気づいていました?」
ヨハンが私の髪を撫でる。
それだけでまた、涙が溢れて。
「…『お迎えにあがりました』なんて言っておいて、何を言ってるのよ……」
ふふ、と笑うとヨハンは「あ、そっか」と思い出したように言う。
「でも、本当はもう少し前から、気づいてましたよね?」
「……………」
青の目が、私を捉える。
どきりと胸が鳴って、吸い込まれるようにポツリと、こぼしていた。
「嵐の夜……誰かと、話していたでしょう」