Moonlit Nightmare
「…お嬢様、本日は……」
控えめに訊く暁に、微笑む。
「大丈夫よ、…今日はなんだか、調子がいいの。
そうね…英会話レッスンを入れて頂戴。」
「ーーかしこまりました」
キ…と重い扉が閉まるのを見て、ベッドに倒れこむ。
「あーー…しんど…」
本当はそこまで調子がいいわけじゃない。
眩暈はするし、起き上がるのだって正直なところ辛い。
…わかってる。これが持病のせいだってこと。
幼い頃から患っていて、ずっと寝たきりで父様と母様には迷惑をかけた。
だからこそ…もう、幼くない今は、しっかりしなくては。
多少の怠さくらい、気にしていられないし。
ふとカーテンの閉まった窓を見て、思う。
外には何があって、どんな空気で、どんな色なのか。
己の足で立って、地に触れて、感じてみたい。
でもまあ、きっと…
一生かかっても、無理なのだけれど。