Moonlit Nightmare
「!……聞いていたんですか」
無言でコクリ、と首だけ動かす。
そう、聞いてしまった。聞いてはいけなかった。
『僕は『あなたの全て』ですよ』
ーーええ、そうね。
確かにあなたは私の全てだった。
あなたは私の光だった。
想いの全てだった。
生きる意味だった。
…生命、そのものだった。
「…僕は、あなたを奪いに来ました」
月に煌めく銀髪が、やけに眩しい。
スワロウテイルが靡いて、私の目を奪った。
「馬鹿じゃないの………。」
最後なのに。最後だから。
私も、笑う。
本当は今すぐ立ち上がって、その腕の中に飛び込みたい。
もう一度だけ、あの星の降る空へと連れ出してほしい。
だけど、もう出来ないから。
それに、これまでの日々のどれよりも、ヨハンといた時間が幸せに感じられたから。
もう、思い残すことなんてーーー……
ぐ、と唇を噛みしめる。
「もう、十分だわ。最期にとても素晴らしい日々が過ごせた……。
だから、早く奪ってよ……
死神さん」