Moonlit Nightmare
ツ…と頬を涙が伝う。
「……ごめんね」
死神が俯いて、呟いた。
やめて。こんな時だけ、そんな顔で謝らないで。
あなたに奪られるなら、構わない。
だから、早く……。
「ごめんね、リンネ。
僕は、君を奪いにきた。奪いにきたはずだったのに。
少しずつ笑顔が増えていく君を見て、ほんとに奪っていいのかなって、不安になった」
「………っ、」
……待って、ヨハン。あなた、なにを言うつもりなの。
口を開くけど、肝心なところで声が出てくれない。
いや、ダメよヨハン。これ以上は、言わないで。
溢れてしまう。止まらなくなってしまう。
「ーーねぇ、リンネ。
本来なら、君の寿命はここで終わりで、それは変えられない。
でも…それは、『人間の』時間軸と空間軸の話」
「ーーー、ヨハン…待って、それ以上は…」
掠れた声が震えて、静寂に溶ける。
ヨハンはニコリと笑って、また口を開いた。
「神様はね、どれだけちっぽけな存在であったって、神様なんだよ。
空は飛べるし、願いだって聞いてあげられる。
……奇跡だって、おこせる。」
「いや、やめて…」
「だからね、リンネ。
僕の命を、君にあげるよ」