Moonlit Nightmare
ビュ、とまた一段と風が強く吹いて、開けたままの窓がガタガタと音を立てる。
「なに、を……」
「大丈夫、リンネの中から僕の記憶はちゃんと消えるから。
…君はただ、悪い夢を見ていただけってことになる。
それと、次に目覚めた時にはちゃんと病気、治ってるから。
安心していいよ」
ふわりと笑みを見せて、あの冷たい指が、するりと濡れた頬を伝う。
彼は、なにを言っているの。
意味が、わからない。
「いや!ヨハンが消えるなんて絶対に嫌よ!!
それに…私、言ったはずだわ。寿命を変えられるのは嫌だと」
彼の手を固く握ると、少し驚いた顔をした後、
今にも崩れそうな笑みを見せた。
「でも、リンネ…。君だって、自分のことなんだから気づいてるんでしょう?
…自分が生きたいと願ってしまっていること」
「……!!」
ギクリ、と体が強張る。
……彼には、なにもかもお見通しなんだろう。