Moonlit Nightmare
Last nightmare
忘れないわ
♦︎☆♦︎
パチリと、目を覚ます。
……なんだろう。何かとても、悪い夢を見ていた気がする。
思い出そうと首をひねるけれど、それはまるで水を掴むかのようにサラサラとこぼれ落ちて、思い出せない。
でも。
「……どうして…」
目を拭った指先の雫に、呟く。
どうして、涙なんて。
ーーコンコン、
「お嬢様、おはようございます」
「っ、ええ、おはよう、暁」
カチャリとドアを開けて顔を見せた暁に先程の涙を見られないよう、慌てて袖で目を拭った。
「お嬢様、本日は9時から16時までが学校、そして17時からはーー……
「……え?」
『学校』……。妙な響きに、胸がざわりとする。
私……学校なんて、行っていたかしら。
瞬間、頭が痛んで。
…また、水を掴むように、思い出せない。
でもまぁ、あの暁が言うんだもの。
きっとおかしいのは、私の方。
「お嬢様?」
「……いいえ、なんでもないわ」
…多分また、学校に行けない少女の本でも読んでいただけでしょう。