Moonlit Nightmare



ずきりと頭が痛んで、夜の闇に一瞬、銀の髪が見えて。


…今のは、幻覚?

そう思った瞬間に、ふわりと、聞こえた気がした。



『ーーリンネ』

「っ、……」


違う、これ、幻覚じゃなくて…。



「……ヨハン……」


名前を呼んだ瞬間、胸にグッと懐かしさと切なさが込み上げて、涙が溢れた。


どうして。どうして、忘れていたの。

私の命を救ってくれた人。
私に外の世界を教えてくれた人。

どれだけ会いたいと願っても…もう、会えない人。


「ヨハン……っ」


ぎゅっと花かんむりを抱きしめた時。


「お嬢様?暁です。申し訳ありません、明日のことで伝え忘れたことが…」

突然扉が開いて、慌てた様子の暁が途中まで言いかけた口を閉じる。



「…暁、部屋に入るときはどんなに焦っていてもノックをなさいと言っていたでしょう」

「……申し訳ありません。
…あの…それは……?」


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