Moonlit Nightmare
ぐい、と涙を拭うと同時に、暁が花かんむりを指差す。
「…貰ったの、大切な人に。
一生の、宝物よ」
だって、例え数週間だとしても、ヨハンが私と共にいてくれた証。
どれも手放せない、大切なもの。
ぎゅっと抱え直すと、暁が控え目に訊く。
「その方は…遠くへ行ってしまわれた方なのでしょうか……?」
「っ、…そう、ね」
遠いどころか……。
もう、会えない。声も、聞けない。
ふ、と目を伏せる。
「どうして、わかったの?」
「それは、花が……」
「花?」
顔を上げると、暁は「はい」と頷いて、「少しいいですか?」と花かんむりを抱きしめていた私の腕を解く。
「この青い花が勿忘草、白い花が白詰草と言います。花言葉はそれぞれ、『私を忘れないで』と、『約束』なんです」
「……………」
私を忘れないで、と、約束……….。
「ごめんなさい、暁。少し…1人にしてくれないかしら。
明日の用事なら、明日聞くわ」
唇を噛んで、震える声を隠す。
「……わかりました。では、お嬢様。おやすみなさいませ」
「ええ、おやすみ」