Moonlit Nightmare
月を背負ってバルコニーの手すりの上に立つ彼は、
美麗で、儚くて、それでいてどこか飄々とした空気を纏って。
この世のものとは信じ難いほどに、
息をのんで、瞬きを忘れてしまうほどに、美しくて。
月明かりに輝く銀髪と、宝石のように青い目と、
夜の闇に靡くスワロウテイルが、私を釘付けにする。
「……あなた、誰」
掠れた声が、風に攫われる。
謎の美少年はその低身長には似合わない、大きめな燕尾服で口元を隠して、
目だけで私を笑った。
その態度が気に食わなくて、聞こえないように舌打ちをこぼす。
「ねえあなた、誰なの。」
少年はクスクスと笑って、手すりに座って、足を組んだ。
「やだなぁ、リンネ。
人の名前を聞くときはまず自分から…
そう、教えてもらいませんでしたか?」
「っ、?!な、なんで…」
どうして、私の名前。
教えてなど、いないはずなのに。