Moonlit Nightmare
ビュ、と風が吹いて、彼の服の裾がバサッと音を立てて翻る。
彼が、私の、全て…?
今日初めて会って、今話したばかりだと言うのに??
「……言ってる意味が、分かりかねるわ」
明らかに怪しすぎる。
私の全てって、なに?
ヨハンと名乗る少年はバルコニーから降り立って、コツ、と靴音を鳴らして私に近づく。
「だから、僕はあなたの願いで、希望で、未来だってことですよ」
「……?、???」
ニコニコと終始笑顔を絶やさない彼に首を傾けると、彼は「物分かり悪いですね」と直球に告げて、
私の腕を、ぐっと掴む。
「おいでよ、リンネ。
君がこのまま首を縦に振ってくれたなら、僕は君の願いを叶えてあげる。」
「!」
私の、願いを?
こんな、私よりも小さな少年が叶えてくれると言うの??
それに、彼は見るからに怪しい。
髪や、目の色。そして名前。
ダボダボなスワロウテイルと、玄関にいた守衛に気付かれず、2階にある私の部屋まで辿り着けた事実。
この国の人じゃないにしろ、謎が多すぎる。
何より出会って数分で『君の全て』だなんて、おかしいにも程があるわ。