Moonlit Nightmare
でも…何故なんだろう。
どこか感じる、安心した気持ち。
この人は大丈夫だと、心の中で私が言う。
「…ヨハン、」
掴まれた腕をそっと離して、
彼の細長く、綺麗な指に、自分の指先を合わせる。
「私の、
私の願いを、……叶えて」
震えた声に笑ったのか、それともこの期に及んで貪欲な私自身を嗤ったのか……
彼の口元が、満足気に弧を描く。
「その願い、しっかりと承りました」
彼はそのまま私の手を引いて、バルコニーへと連れ出した。
夜風が私の頬を撫でて、腰まで伸びた黒髪は、それに乗って踊る。
「ヨハン、あなた、なにをするつもりなの?」
怪訝そうな私の声に気づいたヨハンは、手すりに足を掛けて、振り返った。
「何、って…。あなたが言ったんじゃないですか。『願いを叶えて』って」
「それってまさか……ーー、っ!?」
その瞬間、思い切り腕を引かれて、
足に彼の細い腕が通される。
ふわりと体が浮いて、端正な彼の顔がぐっと近づいた。