Moonlit Nightmare




でも…何故なんだろう。
どこか感じる、安心した気持ち。
この人は大丈夫だと、心の中で私が言う。


「…ヨハン、」


掴まれた腕をそっと離して、
彼の細長く、綺麗な指に、自分の指先を合わせる。



「私の、

私の願いを、……叶えて」


震えた声に笑ったのか、それともこの期に及んで貪欲な私自身を嗤ったのか……


彼の口元が、満足気に弧を描く。




「その願い、しっかりと承りました」



彼はそのまま私の手を引いて、バルコニーへと連れ出した。
夜風が私の頬を撫でて、腰まで伸びた黒髪は、それに乗って踊る。


「ヨハン、あなた、なにをするつもりなの?」



怪訝そうな私の声に気づいたヨハンは、手すりに足を掛けて、振り返った。


「何、って…。あなたが言ったんじゃないですか。『願いを叶えて』って」


「それってまさか……ーー、っ!?」



その瞬間、思い切り腕を引かれて、

足に彼の細い腕が通される。


ふわりと体が浮いて、端正な彼の顔がぐっと近づいた。




< 8 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop