硝子の靴に口づけを
"神の言葉"
「大丈夫か?」
突然少女の前に姿を現した男は神秘的な風貌をしていました。
染みのない美しい肌。サラリと風に靡く青い長髪。色素の薄い切れ長の瞳。
服装は黒いシャツにズボンで、それがまた男の神秘さを際立たせていました。
「か・・・みさま?」
少女は不思議そうに男を見つめました。
極限状態の少女の瞳には、そのように見えたのです。
男は一瞬目を見開きましたがすぐに戻り、少女に笑いかけた。
「へぇ、珍しいな。今時、俺を信じるやつがいるなんて。」
「じゃぁ、神様・・・なの?」
「あぁ、こんなナリでも神様やってマス。」
「凄い!空想の産物だとばかり思っていたのに!」
「まぁ、そう簡単に人の前には現れねぇさ。」
そういうと男は・・・・いや、神は少女の隣に腰をおろした。
「願いを・・・私の願いを、叶えてくれるんですね?」
少女は先ほどとは違う、期待に満ちた表情で神様を見つめた。
「幸せに・・・してくれるんですね?」
少女の願いは、いたって簡単なものだった。
『幸せになりたい』ただそれだけ。
人間誰しも願うこと。
人は辛い涙ではなく、嬉し涙を流したいと願うもの。
この世に生を受け生命、全てに与えられた権利。
少女にだって、その権利はある。
少女は、自分の願いが叶うようにと願った。
しかし神が伝えたのは、あまりにも残酷な言葉だった。
「それは、出来ない。」