私の恋した誘拐犯【完】
分かったようで分からないたくちゃんの言葉に、とりあえず頷いて見せる。



「よし。ほら、次の客きたぞ」



と、油断していたところを突かれ、慌てて振り返り声を張った。



「あ…っお、おおお、お帰りなさ、なさいませ!ごしじんさま!」



「おいあの子なんて言った?」



「ご詩人様ってどんな詩人だよ」



お客さんが吹き出して笑ってるのを、私は嫌でも目の前で見なければならない。



なんという苦痛か。
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