私の恋した誘拐犯【完】
「洋くん、まって…」



人混みにまみれて、どんどん洋くんの姿が遠ざかってしまう。



「洋くん…!」



少しだけ声を張ると、ハッと振り向いた洋くんが私の手を引いてくれた。



「ごめん、考え事してた」



「どうしたの?さっきも、たくちゃんにあんな言い方して…洋くんらしくないよ」



洋くんが私の声を無視して、先に行ってしまうことなんて今までなかった。



たくちゃんの言葉に、そんなにイライラしているの?
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