私の恋した誘拐犯【完】
「千織」



みんなの喧騒から遠ざかる、風のあたる場所で休んでいると、缶ジュースを片手にたくちゃんが私を呼んだ。



「あ、たくちゃん。…もうそろそろ終わりかな?」



時刻は21時を回ろうとしていた。



「そうだな」



頷きながら隣に座るたくちゃん。



一瞬の沈黙。



「悪かったな、今日。…雰囲気悪くしたろ」



申し訳なさそうに謝るたくちゃんに、私はつい吹き出してしまった。
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