私の恋した誘拐犯【完】
初めて、たくちゃんを否定した。



自分でも自分の言葉に驚いている。



「…っ、なんだよ千織、やっぱりおまえあいつのこと好きなんじゃねーの?」



「家族なんだから、好きに決まってるよ…たくちゃんだって家族のこと悪く言われて、いい気分にならないでしょ…!」



つい声が大きくなってしまう自分を深呼吸で落ち着かせ、たくちゃんを見上げた。



たくちゃんはそんな私を冷めた目で見下ろしている。



「…ほんとに、それだけかよ」



「え…?」



「家族として好きだから怒ってんのかって聞いてんだよ」



静かな秋の夜に、たくちゃんの低い声が響いた。
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