私の恋した誘拐犯【完】
莉奈の言う、心を乱されるってこういうことだろうか。



核心を突かれると余裕がなくなるとは、今この状況だろうか。



私は今、自分の焦りを抑えきれていない。



「…たくちゃんには…関係ないじゃん…」



「は…?」



「私が誰を好きになろうと、たくちゃんには関係な___」



ガンッと何かがぶつかる音が聞こえ、つい目を瞑る。



私の言葉を遮るように、たくちゃんが持っていた缶ジュースを床に叩きつけたようだ。



その目は、もう私を見ていない。



「…そうかよ」



低く唸るようにそう言ったたくちゃんは、みんなのいる広間へと戻っていった。
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