私の恋した誘拐犯【完】
「それなのに私…こんなに分かってるのに私……、たくちゃんにひどいこと言った…っ」



「ひどいこと?」



どうしてあの時、言葉を止められなかったのかって、後悔しても仕方ないのは百も承知で。



それでも言わなきゃよかったと思ってしまうのは、きっともう避けられない。



「私最低だよ洋くん…」



肩を落として明らかに落胆する私に、



「あのさちーちゃん」



洋くんは声のトーンを上げて、優しくなだめるように話しだした。



「ちーちゃんが、どういう経緯で拓巳くんにひどいことを言ったのか知らないけどさ」



私の肩に手を置いて、私の好きな優しい笑顔で。
< 180 / 530 >

この作品をシェア

pagetop