私の恋した誘拐犯【完】
「なんの理由もなしにひどいことを言う人じゃないってのは、俺が1番よく知ってるよ」



“なんの理由もなしに”。



その言葉で、昨日のたくちゃんを思い出した。



『なんなのあいつは?女好きなの?千織にも他の女にも同じようにヘラヘラして』



確かにあのとき、私は腹を立てた。



腹を立てて、自分を抑えきれなくなって言ってしまった。



「たしかに理由はあるけど…それでも、言っていいことと悪いことの区別ができなかった私が悪い」



たくちゃんは洋くんに対してひどいことを言ったかもしれない。



だけどそれはたくちゃんから見た洋くんであって、本当の洋くんではない。
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