私の恋した誘拐犯【完】
「違うよちーちゃん」



だけど、顔を上げた洋くんにまったく呆れた様子はなくて。



眉を下げ笑うその顔はむしろ、



「洋くん…?」



嬉しそうだった。



「ごめん…」



私のことを優しく抱きしめる洋くん。



ふわり、シャンプーの香りがして胸がキュッとする。



「な、なんで洋くんが謝るの…?」



「俺のために拓巳くんと喧嘩したんでしょ」



そうだけど、と肩をすくめる私を支えるように、洋くんは抱きしめた腕に力を込めた。
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