私の恋した誘拐犯【完】
「よろしい。じゃあ、用意したら行こっか」



洋くんと一緒に買い物なんて、記憶にある限りでは一度もない。



洋くんの仕事がいつも忙しかったし、私は学校だった。



「洋くん、最近お仕事大変じゃないの?」



用意をしながら何気に問えば、洋くんは頷きながら答える。



「最近は新しい人がたくさん入ってね。その人たちが俺に休め休めって言ってくれるんだよ」



洋くんは休み無しに働けるような人だから、きっと見ていられなかったんだと思う。



洋くん自身、本が好きって理由もあるのだろうけど見てる側としては心配。



「じゃぁ、これからは一緒にいられる時間が長くなるんだね…!」



よしっとガッツポーズをしながら喜ぶ私に、洋くんは優しく笑いながら近づいてくる。
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