私の恋した誘拐犯【完】
「ちーちゃんひき肉……あ」



後ろから私を追ってきた洋くんが、たくちゃんを捉えて声を漏らす。



たくちゃんは洋くんを見ると、薄ら笑いを浮かべた。



「仲良く買い物っすか」



「そんなところかな。拓巳くんは1人で買い物?」



「そんなところっす。…じゃ、保護者頑張ってください」



私には何も話しかけず、たくちゃんは背を向ける。



「あ、たく…っ」



引き止める勇気がなかった。



私が



私なんかが、たくちゃんを引き止めていいものか分からなかった。
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